アトピー性皮膚炎 ー寛解を目指す治療―
アトピー性皮膚炎は、お肌がずっとかゆくて、赤くなったり、カサカサになったりする病気です。お薬を塗ると、しばらくはよくなるけど、またかゆくなって、何度も症状が戻ってしまうことがあります。なぜアトピーが起こるか、簡単に説明しましょう。
健康なお肌とアトピーの人のお肌には、二つ違うところがあります。
まず一つめです。お肌には体の外からの異物が入ってこないように守る「バリア」という仕事をする力が備わっています。でも、アトピーのお肌は、このバリアがちょっと弱いんです。健康なお肌の中に、ホコリやダニなどの異物は入ってきませんが、アトピーのお肌では入ってきてしまうことがあります。これを「バリア機能が低下している」と言ったりします。
そして、アトピーの人たちは、アレルギー反応を起こしやすい体質なんです。お肌の下にはアレルギーに関係する細胞がたくさん住んでいます。健康なお肌にはそこまでたくさんの細胞は住んでいません。これが二つめの違いです。
これらの違いが、アトピーのお肌にかゆい炎症が起きる原因になります。まず、バリアが弱いため、ホコリやダニ、その他の刺激物がお肌に入り込んでしまいます。それに反応して、アレルギー細胞が炎症を引き起こす物質を出します。その結果、お肌が赤くなり、カサカサになり、かゆくなるんです。
ステロイドの塗り薬を試したことがあるかもしれません。ステロイドは炎症を抑える薬で、使うとしばらくは症状がよくなります。しかし、再びホコリやダニが入ってきて、アレルギー細胞が反応して、また症状が戻ってしまいます。これがアトピーの特徴です。
また、症状がひどくなると、お肌には黄色ブドウ細菌が住み着くこともあります。この細菌は毒素を出して、お肌の炎症をさらに悪化させてしまいます。
このようなアトピーの原因を考え、アトピーでは次の3つのポイントを押さえて治療を行います。
お肌を優しく洗うこと:ホコリやダニ、細菌などの異物を取り除くために、石鹸でお肌を洗いましょう。ただし、強くこすらず、優しく洗うことが大切です。
保湿剤を使うこと:バリアが弱いお肌は乾燥しやすいので、保湿剤を使ってお肌を潤すことが大切です。これにより、異物が入りにくい状態を保つことができます。
アレルギー細胞を減らすこと:アレルギー細胞は、炎症がない状態が続くと、だんだん減っていきます。そこで、最初にステロイドをしっかり使って、全身のお肌がつるつるで炎症ゼロの状態にします。それから様子を見ながらステロイドを少しずつ減らしていくと、アレルギー細胞が少なくなってお肌の性質が変わり、湿疹が出にくくなっていきます。
治療を進めると、ステロイドの使用頻度を減らすことができ、ステロイドの副作用を防ぎながら、症状が改善させることができます。毎日お薬を塗る手間はかかりますが、お肌がきれいになり、症状が軽減され、つらい思いをすることが少なくなります。
半年、一年と、じっくり治療を続けるうちに、お肌の性質が変わって湿疹が出にくい肌になり、アトピー性皮膚炎が寛解していきます。このような治療法をプロアクティブ療法と呼びます。
また最近では、弱いステロイドくらいの効果がありながらステロイドではない新しいお薬が登場しています。JAK阻害薬(コレクチム)やPDE4阻害薬(モイゼルト)といったお薬です。
ステロイドのような副作用がないので、毎日塗り続けても問題がないとされています。
コレクチムやモイゼルトを毎日塗り続けて、アレルギー細胞をじっくり減らすという治療を選ぶこともできます。
この他、重症の患者さん向けに効果の高い内服薬や注射薬も登場しています。
必要と思われる患者さんにはお勧めすることがあります。
新しいお薬も上手に活用しながら、しっかり治療を続けて、アトピー性皮膚炎の寛解を目指しましょう!
以上の説明を動画でご覧いただくこともできます。
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